キミノの大冒険

12月はコツコツと。

第七章:あれは幻なのか、究極な状況で受けた衝撃の4時間。

17:30を過ぎると暗くなってくる。サポーターとの電話で心が落ち着き、無我夢中で山を登りはじめた。不思議なことに、ここではもう辞めたい気持ちは一つもなくなった。

 

 

寒いなら動けばいい。

 

できるだけ明るいうちに前へ進もう。

 

暗くなっても前を目指す気持ちが芽生えたとき、道を照らすライトの光の充電が少ないことを合図する点滅が起きた。

 

 

とりあえず前に進もうと、ヘッドライトの光量を下げ、携帯のGPSで場所を確認しながら進んだ。 

 

 

ありがたいことに、すぐに焚き火の光が見え、大会スタッフの声も聞こえた。Mountain Houseに到着したのは、20時ちょっと手前だった。

 

 

ライトの消耗とともに、体力もまた消耗していった私は焚き火の前に座り、サポーターにしばらく進めないと、連絡入れ、身体を休息させた。

 

寒そうな私に紅茶を渡してくれた。スタッフ用の紅茶だ。感謝してコップを両手で持ち温めながら少しずつ飲んだ。 

 

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これはサポーターの様子だけど、私もこんな焚火のもとで温まった

 

そんな私の姿を見た大会のスタッフさん(ここの山の区間は車は入れないのでオマーンの軍人さんがスタッフをしてくれている)から、寝るならスタッフが休息する避難小屋に寝袋もあるから寝ていきなよ、と案内してくれた。冷えたカラダ、ボロボロなココロにとてもつもなく人のやさしさが染みわたってきた。

 

 

 

中に入ると真っ暗の小屋の中で休憩していた複数人の軍人さんが、私に気づき、これを食べなよ、とウエハースやスナックなどを四人からいただいた。

 

 

嬉しくて、ありがた過ぎて、でも全て食べれなくて、でも受け取って感謝した。

 

 

横になった。

 

 

あたたかい。

 

 

落ち着いた。

 

 

隣に寝ていた軍人さんが医療班なのか、お前は熱があるのではないか、と顔や首に手を当てて心配してくれた。心配してくれるその方にオーケーオーケー、アイムスリーピング、と伝えたが診察が始まった。

 

身体を起こされ、まずはSpO2を測られた。さっきのメディカルチェックで低かったので心配したが96%と問題なし。次に体温計を渡された。本当に熱があるかもしれないと思い、少し脇を開いて体温が上がらないように誤魔化そうとした。ただそうなると体温がなかなか測れないので、おかしいぞ、とめっちゃ数値を見ようと胸元をのぞかれた。結果36.5℃。最後に、血圧、脈拍測られたがすべて正常問題なし。

 

 

ふー。。。よかった。

 

 

だが診察は続いた。

  

 

なぜか頭をグリグリ触られ、まだ熱を疑っているらしい。

 

 

 

私の英語がダメなのか、疲れ切ってるから声が出ていないのか。

 

 

そして、なぜか寝袋を薄いものに変えられる。寒い。

 

 

寝させてよー。。。。

 

 

外から人が入るためにドアが開いた。その軍人さんの手も止まった。やっと終わったと安心した途端に寝落ちした。

 

 

23時、物音で目が覚めた。サポーターから心配メールが来ていたが連絡を返さずに寝てしまった。寝袋の中で現状を報告して出発を決意した。

 

 

外に出たら、さっきまであった焚き火が無くなっている。

 

 

あれ。もう最後尾で後片付けしたのかな。

 

 

 

外にいたスタッフの方にコースの方向を教わって進むが、少しばかり藪のコースのためマーキングが分かりにくい。うろちょろマーキングを探しながら進んでいると、私のライトの動きに気づいた先ほどコースを教えてくれたスタッフが、『ダウンダウンダウン!』『ライトライト!!』と大きな声と上からライトで光らせてくれ、コースを教えてくれた。

 

 

なんて、優しいんだ。。。。。。

 

 

教わった通りに下へ降りていくと、すぐに焚火の光が見えた。

 

 

あれ?

 

 

ここがMountain Houseらしい。

 

さっきのは????

  

あれ?幻?

 

 

 

と思いながら、水を補充していると、軍人さんから、『お前はジャパニーズか?』と聞かれたので、イエスと答えた。すると、『ジャパニーズいるぞ』と教えてくれた。

 

軍人さんについていくと、テントの中で寝ていた、日本人参加者の方がカラダを起こした。ゼッケンに表記してある日本の旗マークを見て日本人だと確認したが、同時に名前を見て知り合いではないことを確認した。

 

 

だが、躊躇なく、はじめましてのその方にお願いした。

 

 

『すみません!!!一緒にシャムス山登ってください!!!!ひとりじゃ今行ける自信がありません。』

 

 

 

よく無謀というか迷惑というか、初めての方に大変失礼なお願いをしたなと、今では思う。でもその時は必至だった。人に頼ってでも前に進みたかった。サポーターの元へ行きたかった。

 

 

 

その方は眠気とめまいで1時間くらい寝ていたらしい。おそらくまだ寝るつもりだったとも思う。それでも、こう言ってくれた。

 

『ん〜(眠そうに)そうですね〜(頭がボーとしている)いきましょうか〜。』

 

 

 

(; ・`д・´)

 

 

 

すごいな、行ってくれるんだ。

 

 

正直そう思った。後で知ったその方は世界の数々の過酷なレースに参加され、今年の納にオマーンを選んだという。そんな方だったからOKしてくれたんだと思う。本当に人の善意をこんなにも感じたことは無い。

 

 

2000mを越えたその場所は風が強く吹き始め、気温はどんどん下がり止まるとかなり冷え込む時間だった。

 

 

 

午前1時。36時間経過。

 

 

みんなの居るサマ・リゾートへ行ける。

 

 

希望の光で、消えかけていた心の炎がまた明るく赤く満たされた。

 

 

待ってろ、シャムス山。

 

 

 

 

 

つづく。

 

 

 

 

 

第一章:スタート前の興奮・緊張・歓喜、こうして始まったOman by UTMB

第二章:走り出しは1位。自分のペース、に葛藤する序盤

第三章:いちばんの楽しみクライミングゾーンはハイテンション

第四章:首位争奪戦、翻弄される1日目の夜明け

第五章:3㎞で1,000mアップのW8で満身創痍  

第六章: マイナス思考との葛藤が続く2日目の夜へ

第八章:焚火とオマニコーヒーとTODAYフレンド

最終章:この瞬間はこの時しかなかった

 

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