2つ目にして最後のサポートエイド、サマリゾートに到着した。138.3㎞/9034m+地点にやってきたのは、朝の8時17分。真っ赤な朝日も黄色の太陽に変わった朝を迎えた。いや、迎えてしまった。
走りたいのに走れなくて、食べれないからペースも上がらない。でも作ってもらったご飯だったら絶対食べられるから、復活できると思っていた。でも、想定ではゴールしている時間だし、待たせてしまったみんなに申し訳なくて複雑な顔でエイドに入った。
到着すると、すぐに走るための準備をしてくれた。カメラマンの翔さんが『おつかれ!』とハイタッチを求めてくれた。みんなが笑顔なのが安心して涙が出てきて、そしたら翔さんがすぐレンズ向けてくるから必死に隠した。すぐ撮ろうとする(それが仕事なんだけど。笑)
コースレイアウトを見て必死に予定を考え直した。この後のコースを頭に入れて、どんなコースだったか、どこで攻めるか、気合いを入れ直した。私の前に通過している3位の選手は、もうココにはいない。得意なところで攻めるしかない。
コースを頭にいれたのに、予想外のガレ場の下りで12㎞ひたすら下るのに3時間23分もかかった。もう笑っちゃうしかなかった。もうどれもこれも予想外。でも、夜中通るはずだったこの区間を昼間に通ることで、絶景が見れた。悔しくもあり、興奮している自分も居た。
足は残ってる。
まだ攻めれる。
まだまだいける。
食べたから残りの30㎞ちょっとなんて余裕。
360℃に広がる最高の景色を、朝の透き通った空気を、贅沢に独り占めして走った。
下った先は、下見で出会った彼の家についた。そして出会えた。
奇跡なんて言葉は好きじゃないけど、これは奇跡だと思う。もう興奮して、私の顔覚えてる?!ってジェスチャーで伝えたら、もちろん!!って笑顔で答えてくれた。
奥地に行くとオマーンの昔ながらの家その家族とそこの文化に出会えた。
悔しくて必死だったあの真っ暗なシャムス山が愛おしくなるほど、この時間に来れてよかったと思った。
きっとアスリートとしては失格なんだろうけど、この瞬間はこの時しかなかったから。
しばらく下りが続いたが、この区間のオマーンの植物や岩が狂気的で足は傷だらけ、何度も何度も岩は当たるし、植物のトゲは刺さるし、痛いってば、って言いながら楽しくなってきた。笑
サポート、撮影の皆と最後に会ったのがThe View(160㎞/10179m+)14:50通過。残りは経ったの12㎞。ゴールはもう直前。加藤さんと『夕刻までにゴールがいいね〜』って話した。余裕っしょ!って答えたけど、残り2時間30分。オマーンのこれまでのコースを考えると急がないと。
最初の渓谷を下るとくだった標高を全て登り返し、また谷に降りると、少し変わった雰囲気だった。ヤギ使いのオマーンの方がかなり際どい傾斜をなんなく歩いている。奥に街が見えゴールが近いのかなと思った瞬間にその間に渓谷が広がる。だよね、って独り言言いながら登った。笑
下って登ると、上で家族がこっちを見ながら会話していた。最後のエイドにしてはひっそりしてるよな、と思いながら登っていると、そのうちの一人の子供が下りてきてガンバレ!って声をかけてくれた。
私『上はエイドステーション?』
子『???ウォーター???』
私『イエス!イエス!』
子『あるよ!!』
思った以上に早くにエイドがやってきた。まだ夕刻にも時間がある。よかった。
その子に付いていくと、日本でいうと"私設エイド"を作ってくれていた。自分のお金で買ってくれたのだろうか。350㎖の水を沢山買って用意してくれている。これまで通ったランナーにも渡したのだろう。空のペットボトルがいくつか転がっていた。何時間待ってるのだろうか。
『シュクラン(オマーン語でありがとう)』
嬉しい心遣いに感動しつつサヨナラを伝えて走りだした。が、おかしい。ここがエイドじゃないなら後どのくらいだ。と携帯で場所を確認すると、あと8㎞もある。すでに16時を越えていた。やっぱりオマーンクオリティだ。
ここからはもう全力疾走。足が痛かったけどそんなの考えている暇はない。とにかく加藤さんと約束した夕刻までにゴールする。それだけだった。せっかくのジャングルみたいな景色ももう味わう暇はない。とにかくとにかく夕刻までに。
そして見えたゴールの街並み。17時30分を過ぎている。残り2㎞を切ってもまだゴールできると思えないほど遠く感じた。
ゴールのシーンを何度考えたかってくらいイメージしていたのに、感情のままゴールした。
@utmboman 完走できました。52時間50分11秒(3位)
ユミさんとハグした瞬間、集中の糸が切れてふらついた。
時刻は17時50分。
コメントを求められたけど、涙で声が出なくて何も答えられなかった。
とにかく、涙が止まらなかった。
おしまい。
このお話の動画が公開されました。文章では伝わらないオマーンの最高の景色と、私のそのままの感情が溢れ出した表情と、このブログを読んだからこそ伝わるものが、たくさんあります。ぜひ楽しみにお待ちください。
これまでの話。
第一章:スタート前の興奮・緊張・歓喜、こうして始まったOman by UTMB
第六章: マイナス思考との葛藤が続く2日目の夜へ
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