キミノの大冒険

12月はコツコツと。

6月8日世界選手権遠征7日目いよいよスタート

とうとうレース当日がやってきた。天気は快晴。ポルトガルに来て一番天気が良い。スタートは9時。宿は7時20分に出発し、現地には8時には着いた。

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会場は大きな音楽で選手たちが続々と会場入りしていた。日本チームは早々に荷物を置き、各自アップに出かけた。スタート地点を試走したメンバーから、スタート直後に教会へ石畳の坂を駆け上がることを聞いていたので、そこを使ってダッシュを3本。本番に、できるだけ楽な気持ちで走れるように刺激を入れた。

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レース直前。動きは問題ない。あとは集中するのみ。日本チームの集合写真を撮り、声をだし気合いを入れた。スタートゲートに並ぶ前には必携品のチェックがあった。今回の必携品は、エマージェンシーシート・ホイッスル・充電された携帯電話・500㎖以上の水だ。

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すべてのチェックを終えゲートに並んだ。すでにゲートは選手でぎゅうぎゅう詰めだった。最前列には横内君がすでに陣取っていた。さすがだ、気合いが感じられた。森本さん、川崎くんも前に居る、吉住さんがそこに向かっているのを見て、私もすかさず前からスタートできるようにスタンバイし9時を待った。

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トレイルランを始めて以来、こんなにもピリピリしたスタートは初めてだった。各国の選手達の熱気・興奮・殺気が伝わる。身動き一つ取れなくなったスタート5分前。SUUNTOのGPSの準備もOK。無事にスタートラインに立てたことに感謝した。

 

スタートの合図と共に皆が一斉に飛び出した。後ろから続々と押される。陸上競技の1500m走のような感じだ。久しぶりの感覚をすかさず思い出し、スムーズに自分の位置を陣取った。

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ロードレースかのようなスピードスタートは暫く続いたが、トレイルに入った途端、得意不得意が分かれた。前の人だけを見るとその前が遅れていることに気づかず出遅れる。常に30m先の様子を伺い「この位置で妥協していないか」と自分に問いかけ続けた。

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前に開きが出た瞬間、抜かせるポイントを逃さず見つけてかわしていった。とにかく前半にプッシュするしかない、後半で追いかける力を余しておく、という考えだとロングレース用にトレーニングしてきた私は出遅れる。距離は踏んでいるので足が終わることはない、とにかくスピードを出せるかどうかだ、と女性の選手の走りを真似て突っ込むことができた。私もこんな走りができるのか、といつもは男性陣の後ろで恐る恐る下っていたが、今日は違う。女性の走りは美しく、綺麗で走りやすい。これは、楽しい。

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話に聞いていた足首まで水がある川を渡り、聞いていなかった水が流れるトンネルを暗闇の中じゃぶじゃぶ進んだ。ジャングル感あふれるコースレイアウトに英語を話せない私が「Wow」と声を出すほど驚いた。

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最初のウォーターステーション(7.1㎞地点)へは予定より4分早かった。スタートダッシュのことを考えると、予定通り。

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次の16㎞地点のエイドは日本トレイルラニング協会の岸さんと長島さんがスタンバってくれた。すかさず私の名前を呼んで居場所を教えてくれ、頼んでいた水の交換、ジェルを渡してもらった。1つあける?と長島さんが声をかけてくれた。「はい!」と返事をし、すぐにエイドを出た。この区間のペースは予定より30秒早い程度。予定通りだ。まさにカーチェイスのピットイン。100mileじゃ考えられないようなペースでエイドを後にした。

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エイドを出た直後に石の階段を駆け上がった。階段の両脇にはたくさんの方が大きな声で吠えたり、音を奏でたり、歩くと背中を押された。スカイランニングのレースで見たことがある景色だったが、実に爽快な、気持ちが昂る瞬間だった。これは、気持ちいい。

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ここからひたすら上りが続く。試走した場所に入るので、上り貴重なものの、アップダウンの繰り返しだということが分かっていた。ここでどれだけ走れるかがポイントだ。しかし、エイド直後、最初のオーバーペースがきいたのだろう、水をプラスしたのにも関わらず、エイドを出て4㎞くらいで水をほぼ消費した。暑い。気温はそこまで高くないのに直射日光がかなり当たる。予想以上に汗をかいていた。

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予定変更。水切れ対処のために少しペースを落として、ぎりぎりラインを攻めた。ここでペースを抑えるのはかなりもったいないが、仕方ない。いつも不調となる胃の調子は良かったのでジェルは定期的に採り続けられた。エイドで行う事を頭に浮かべ、指でやることリストを数えスタンバった。

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29㎞地点のエイドへ到着。この区間10分遅れだ。すかさずコーラを飲んで暑さをフッとばした。水もしっかり取り、オレンジ2個・バナナ2本、股関節を伸ばし、一旦体制を立て直した。遠くで、日本ウルトラランニング協会の岸さんが待ってくれた(サポートが出来ないため)。仲間が頑張っていることを聞き、前を追いかけろ!、という言葉に力もらい、水を得た魚のように復活した。

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登りのピークである風力発電所の景色がやってきた。これを待っていた。試走では雨で見れなかったその景色が最高に気持ちよかった。常に少し走ると応援してくれるスタッフ・現地の人・各国のサポートの方々がいた。開催国のポルトガルの方々は、常にPortugal!Portugal!と叫んでいたが、私にも声をかけてくれた。笑顔でサンキューと返したが、なんだろうか、この感覚は。本当に、楽しい。

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ラストエイド(34㎞地点)では、この区間予定より6分遅れ。先ほどのエイド滞在時刻も加算されているが、トータル12分の遅れだから、かなり先ほどのペースダウンが響いている。何としても下りで飛ばしたい。

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目標タイムは5時間切り。キロ4分20秒でいけばなんとか。。とにかくプッシュし続けたが、すでにここでは前後の選手が少ない。だけど、少しでもプッシュすれば前に女性選手がいる。1つでも順位を上げたい。

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ゴール直前、男性陣が迎えてくれた。ラストの下りに丸太の橋が10以上現れ、クネクネ曲がるコースにペースを上げきれず、この区間予定の9分遅れ、トータル21分遅れの5時間12分でゴールした。

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しかし久しぶりにレースにのまれず、自分でコントロールできた感触をつかめた。もちろんタイムも順位も遅いが、STY優勝の2015年から4年。あれ以来何かに捕らわれ、ひたすら自分のレースが思うようにできなかった。その見えない壁をやっと壊すことができた。

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最後まで諦めず、終始楽しかった。女子72位というのは、遅い。日本の団体戦(各国上位3名の記録で競う)にも絡めなかった。だが、世界には自分よりも速い人がこの大会だけでも71人も居る。それがとてつもなく、ココロを昂らせた。打ちのめされたのではなく、終始多くの女性選手と抜きつ抜かれつを繰り返した。こんなにも楽しいことはない。

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また戦いたい。もっと強くなって、もっと前でより高度なところで、また走りたい。その気持ちが溢れかえったのがゴールの表情として出たのだと思う。楽しかった。なんて楽しい世界だ、と思った。こんなにも世界は広くて、こんなにも遠い存在が沢山いる。でも、みんな人間だし、日本チームもトップ争いに絡める選手がいる。

 

気持ちよかった。走っていて、こんなにも気持ちよく走れたのはいつぶりだろうか。自分の順位にこだわらず、今の自分を出すにはどうすればいいか、自分を鼓舞するにはどんなポジティブな言葉がいいか、もっと強くなるにはどんなトレーニングがいいか、意欲が増す。負けたから、遅いから、悔しくて走りたいわけじゃない。

 

また戻ってきたい。この場所に。もっと高みで争える選手になってまた挑戦したい。自分の中でのトレイルランが楽しいとは、こういうことなのか。周りとの比較にとらわれ過ぎていた3年間。なんて気持ちのいいゴールだったか。走るのが楽しい。これが私の楽しみ方だった。

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最後に。

大会出場に向けて寄付をしていただいた多くの方々、サポートをしてくださった日本トレイルランニング協会、日本ウルトラランニング協会の皆さま、挑戦を喜んで賛同してくれたスポンサーのTHE NORTH FACE の皆さま、娘の大会のように応援してくれた会社の皆さま、常に応援と心配してくれる家族と仲間に感謝します。

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2019 Trail World Championship

6月8日 9:00am start

44km/2,200m

Time:5:12:52

Rank:72nd(Total rank 249th)

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