キミノの大冒険

12月はコツコツと。

第39回日本登山医学会学術集会に参加してきました。

低酸素、低体温、高所反応といった本学会で従来から受け継がれている、医学・生理学的側面に焦点をあてた伝統的な登山医学に関する研究や症例について発表される、日本登山医学学会学術集会に今年も参加してきました。
www.jsmmed.org


つくばで開催された39回目の今年度の学会は【高齢者の登山】をメインテーマとし、『科学からアプローチした雪崩実験』『山での外傷に対するファーストエイド講座』『安全で楽しいトレイルランニング』についても深く切り込んだ内容でした。

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大学院1年生から続けて参加しているこの学会では、医学的な知識も学べ、貴重な症例発表による、より深く山の医学を知れることが魅力的です。過去には、奨励賞も受賞していただきました。社会人になっても研究を続けてください、という想いも込められていると思うので、この賞をいつも心に留めている、思い入れ深い学会です。

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2016年に奨励賞をいただきました。

大学4年から始めた山の研究は、『山岳事故を減らす』ことをテーマとして、恩師の鹿屋体育大学の山本正嘉教授の下、学んできました。

 

しかしながら、山岳事故はなかなか減らないのが現状です。警察庁が調べている山岳遭難の概況を下に示しました。統計を始めた平成21年以来、遭難発生件数、遭難者数ともに、昨年過去最大の件数を示してしまいました。

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また年齢別で見ると、60歳以上の方が半数を示していることが分かります。ただし、年齢においても、山に入る方の割合は圧倒的に若者よりもご年配の方の方が多いことも関係していると思います。

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しかしながら、事故件数が多いことは事実であり、登山医学の研究がこの事故を食い止めることに繋がることは何よりも研究が生きる世界だと思います。今年は発表できませんでしたが、来年こそは必ず小さな症例でも発表しようと意欲をかき立てられました。

 

また、今回はユニークな講座も。『雪崩を科学する』というテーマのもとやってきたのは、ナダレンジャー!防災科学技術研究所の納口先生による、実験を交えた雪崩がなぜ恐怖なのか、なぜ自然の雪崩はあそこまで大きな被害を及ぼすのか、を学びました。会場中がこの実験に注目し、納口先生の卓越したトークにより雪崩について学ぶことができました。

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ナダンレンジャーの内容はこちらからぜひご覧ください

感性でとらえるなだれの科学おもちゃ「ナダレンジャー」

 

さらに今年はトレイルランニングについて、市民公開講座が開かれました。講師は、鹿野楓太先生。外科の先生であり、国際山岳医を持ち、2018年TJARを8位入賞されている先生です。TJARとは日本海/富山湾から太平洋/駿河湾までその距離およそ415㎞を自分の足のみで8日間以内に踏破する過酷なレースです。

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そのTJARから学ぶ安全な楽しみ方、ということで『より長く、安全に快適にトレイルを楽しむ方法』として、講義をしていただきました。先生の教えは、山に入る方にはぜひ多くの人に聞いてもらいたい内容でしたが、今回のような講座は初めてだ、ということでした。

 

これまで、山の研究を通して、山の仕事をしている私でしたが、どのように山と向き合い、どのように山を学べばよいか、道しるべが見えた気がします。今回の内容は手書きではありますがまとめたので、別の機会にまたブログにしてみようと思います。

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毎年一度のこの学会に、大学の山本先生をはじめ尊敬する大先輩方と語り合うことができ、とても有意義な時間を過ごせました。研究というと、敷居が高く難しいですが、数字を元にいろいろな考えを色んな方と、意見交換できればと思います。

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