高所を歩くのではなく走る。しかも遊びではなく、レースという特殊なモチベーションの中、ココロやカラダはどのような反応を示すのか。ココロとカラダは何を訴えるのだろうか。
大学では、運動生理学が専門の研究室に入っており、カラダの変化についての議論をよくしていた(かと言って、運動生理学が得意なわけでもなく、赤点取るくらい苦手だったけど。笑)
そこで学んだことは『なぜ?』と頭に【はてな】を浮かばせること。
起きた現象をそのまま放置せずに、なぜ起きたか、なぜその反応をするのか疑うこと。それは社会人になっても癖づいている。
アンドラのレースに参戦する理由はただ一つ。
『高所レースではカラダはどう変化していくのか』
この【はてな】を解決してくること。
どのようなココロでレースを過ごし、どのようなカラダの反応を示していたのか。
今回はレース中のカラダの酸欠度(正式には動脈血酸素飽和度)を、パルスオキシメータを使ってレース中の所々で測定しながら走ってきた。
◆心臓にぶつかってくる太鼓の音と色彩豊かな花火。
同じレースの100M『Ronda』が早朝にスタートし、その日の夜10時がMiticのスタートだ。スタート会場が目の前のホテルに泊まったので、会場の盛り上がりを近くで感じた。アンドラといえば『太鼓の演奏』昔から太鼓の心臓にぶつかってくる音がたまらなく好き。スタート直前に鳴り響き、自分の出番が今か今かとココロが高まった。
同じMiticを走る近藤さん(左男性)とヒロさん(真ん中女性)と出会い、みんなで士気を高めた。スタートの標高は1200m。酸欠度は96%。脈拍84bpm。かなりドキドキしていた。笑
◆強敵な良い子ちゃん現象との闘い
スタートしてすぐに街は終え、トレイルに入った。いつもより慎重に『落ち着いて』と自分に言い聞かせた。原因は不明だが、スタートして1時間。なんと、眠くなった。夜の11時に睡魔なんて、完全に良い子ちゃん。
普段は夜遅い仕事なので、慣れているはずの時間で眠い。前回の海外レースでレース中に眠くなる、という時差ボケによる失敗を学び、今回は時差対策は万全だったが、現地の時間に慣れすぎたのか、夜ちゃんと眠りにつくような体内時計になったのか。。。
『レースに集中できていないせいだ、起きろ!起きろ!』とかなり願ったが、、、思いは伝わらず朝まで粘ることにした。
とにかく眠い、ふらふら、だが転倒すれば大けがするに違いないトレイルをただただ、登っていくのは本当に辛く、夜が長く長く感じた。この時に助けれてくれたのが、近藤さん。『眠い』と伝えると『一緒に行きましょう』と引っ張ってくれた。こんなにも日本語で会話できることが幸せだと感じたことはない。
近藤さんから見た私の状況はこちらのブログから。よく覚えているなぁ~ってくらいコース情報も書いているので、アンドラ興味のある方はこちらを参考に。
◆苦手な山岳コースを酔拳で登る必死の時間
アンドラは山岳コース。ほぼ走れない。と聞いていたが、ほんとに走れない。目の前の岩をよじ登りながら、このレース最高峰comapedorosaに向けて前に進んだ。
急斜面ではあるが先は長いため、慌てず、、、、だけどレースだから焦る。標高2000m台が続くが、高山病の初期の症状はない。ただ『眠い・・・(=_=)』良い子ちゃん現象なのか、高山病のせいか分からない。こんなにも危ないトレイル状況なのに、カラダが目を覚ましてくれない。
眠気によりフラフラと前に進む。眠いわりにはいいペースで動けているので、酔拳みたいな感じだったと思う。おそらく、後ろを歩いていた人は心配で仕方なかっただろう。。。ごめんなさい。
やっとのこさ見えたピーク2943m。アンドラの最高峰は真っ暗。分かってはいたものの、あとからRondaを走った片岡さんが昼間に通った景色を見せてもらうと、次出るならRondaだなと思うほど、きれいな景色だった。
ここからの下りは海外の人は早い早い。急斜面、砂利道、くねくね道をみんなあっという間に下っていく。わたしは、、、へっぴり腰になる。強いのは、、、やっぱり平坦でした。笑 アンドラのコースは雪が溶けていないところも。
スタートして4時間半経過。標高2943m。酸欠度89%。心拍150bpm。
これだけ心拍上がっているのに、この酸欠度なら問題なし。感覚も良好。眠さが取れないが、酸欠によるものではないみたい。よしじゃあ起きてくれ。と何度も願った。笑
◆レースでの楽しみの1つの地域の食べ物
トレイルレースの醍醐味の一つはエイドで振舞われる地域特有の食べ物。
ヨーロッパといえば、パンにチーズに生ハムにメロン。とココロ踊る響きばかり!日本に居る頃から楽しみにしていたが、ところがどっこい。まったく食べたいと思わない。手が伸びない。おいしいけど、小さくカットしているのに全部食べれない。ご飯は残さないがモットーの私が全く食べれないのにショックだった。
食べないのはガス欠になるので、オレンジ、パン、ナッツを食べる。だけど量が全くもって足りない。ジェルでカバーするが、なぜだろう。いつもは大食いなのに(+_+)
エイドのスタッフは何十時間も笑顔で声をかけてくれる。本当にすごい。そして、やっぱりエイドが一番元気になるポイントは海外も日本も変わらなかった。
◆夜が明けて広がるきれいな景色とは裏腹なココロの事情
海外のトレイルはきれいだと。日本にはない景色で絶対に自分の目で見た方がいいと。多くの人から共通の話を聞いていた。夜が明けて見える景色はやっぱりきれいだった。
ただ、夜中に眠さを我慢して動いたせいで、上半身に力みが生じ、背中の痛みが出てきた。平坦でも、得意なサーフェスでも歩いてしまう。立ち止まってしまう。なかなか動かないカラダにスタートして7時間。すでにDNFが頭に浮かぶようになった。
そんなときに現れたのが一台のヘリコプター。救急搬送かと何かあったのかとびっくりしたが、グルグル回っている。おっと撮影してる。『かっこいいところ見せなきゃ』とココロの中で呟いて走り始めた。笑 あとで聞いたらたまたま15分だけ乗ったタイミングだったという日本から来ていた取材班の一ノ瀬さんに遭遇。『なんてラッキーガールだ。』と思ったのはゴールしてから。笑
ここまで連れて来てくれた近藤さんに感謝し、お別れを。ここからは1人の時間がスタート。とにかく最初のドロップバッグが置いてあるMarginedaエイド(44k地点)へ。『とにかく一度寝よう』『今のままでは楽しめない』『しっかり食べて横になろう』必死の思いで街に降りてきた時には、11時間経過。
アンドラMitic、3分の1終了。次へ足を進めるココロは残っているのか...to be continued