キミノの大冒険

12月はコツコツと。

山で必要なエネルギー補給の計算方法とは。

ずいぶん前になってしまいましたが、PEAKS5月号にて登山時のエネルギー消費量について取材していただきました。

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PEAKS5月号

「軽量化の極意」という雑誌のタイトル通り、中にはギアの話や食べ物の話など最新情報が詰まっていますが、その中で「実際、荷物を軽くすると楽になるの?」「荷物だけじゃなくて自分の体重も軽量化させた方がいいよね?」という疑問に対して、登山時の消費エネルギーの観点から答えさせたもらいました。

 

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登山と体重のディープな関係


 

というのも大学から大学院時代まで、登山の運動生理学を専攻していました。登山時のエネルギー消費量というのは、私の大学の先輩方が何度もボンベを背負って山を歩いて測定したデータをもとに計算式が求められ、今の登山者に有益な情報を提供しています。

 

研究内容をそのまま載せるとワケワカメになるので、PEAKSの読者さん向けにライターの山本さんと、編集の泥谷さんが分かりやすくまとめてくださいました。そして、イラストレーター高橋さんの素敵なイラストとともに。

 

今日は紙面上では伝えきれなかった一歩踏み込んだところまで少し説明させてもらえたらなと思います。紙面を見てから、この後を読んでもらえるとより内容を理解しやすいと思います(今回は素敵なイラストを利用できないため悪しからず)。

 

そもそも登山時のエネルギー消費量を知るメリットは?

山を登るためには普段の生活以上にエネルギーが必要なことはわかると思いますが、その山を登るためのエネルギー消費量を事前に知っておくと、何がいいのか。その一つに、持っていく食べ物の量を事前に予想することが出来るというメリットがあります。

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消費と摂取のエネルギーバランスが大事

消費するエネルギーに対して一般的には7〜8割を摂取しましょう、と登山では言われています。それより少なくても動ける人もいますし、さらに糖質なのか脂質なのか、となるとまた個人差が出てきますが”基準”となるものができると、そこから差し引きがしやすいと思います。

 

エネルギー消費量はどうやって求めるの?

誰でも計算できるように、過去の研究者たちの努力により計算式で求められるようになりました。計算するのに必要な情報は2つ、①山の特性②登山者の特性です

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山は4つ、登山者は2つの要素によって特性が分けられる

山を考えてみると、上りがあり、下りがあり、水平方向の移動があり、それにかかる時間、と4つの要素が思い浮かぶと思います。一方、登山者は自分の体重に加えて、装備重量が加算されます。これにはザックだけでなく、登山靴やストックなどの装備も含まれます。

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山の特性は4つ、登山者の特性は2つの要素で決定される



さらに単位とともに詳しく見ていくと、それぞれの要素について理解できると思います。山の特性は①歩行距離(km)②上りの累積標高差(m)③下りの累積標高差(m)④行動時間(h)の4つ、登山者の特性は①体重(kg )②装備重量(kg)によって決定されます。

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ここまで大丈夫ですか?笑

実際の例で上の計算式を考えてみましょう!

 

例えば東京都最高峰の雲取山(鴨沢からの往復)のコースルート情報を入れてみましょう。登山者の特性も体重60km、装備重量10kgにて想定しみます。

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コースルート、個人の情報を入力

 

必要な情報が集められました!

ここからエネルギー消費量を計算するには、もう一つ重要なことがあります!

 

それが係数!

 

同じ距離を歩くのにも上り下りにかかるエネルギーは変わってきますよね。大事なのがここの部分であり、一気に数字が増えてワオ!って難しくなると思いますが、それぞれの山の要素にこの係数をかけることでエネルギー消費量が求められます(この係数の算出こそが先輩方の研究の成果なのです)

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各要素に係数を掛けることよってエネルギー消費量が決定する

 

着いてこれましたか?笑

大丈夫です。着いてこれなくても今は便利な世の中になっています。笑

 

求められた数字が登山における行動中のエネルギー消費量として算出されます。

 

上記の例の場合:山の特性(コース定数):50×登山者の特性:70=3500kcal

 

体重60kg、装備が10kgでの雲取山の場合、3500kcalものエネルギーが消費される!と予想できました。この7〜8割程度の食べ物&飲み物を用意しましょう。

 

そういった計算方法となります。

 

ただし!山の特性は計算がめんどうですよね笑

 

今では山の情報の中に「コース定数」という表記で情報サイトに載せてくれていますので、そちらに登山者の特性(自分の体重と装備重量)を掛けるだけですぐに算出できるようになっていますので、こちらも参考にしてみください。

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ヤマケイさんより引用

山の特性は、そのコースの特徴から算出したものであり、難易度としても捉えることができます。そのためこの山の特性(コース定数)が体力レベルとして計算され、山のグレーディングが作られています。どうやって計算されているか分かると、自分の体力レベルや次に挑戦する山の参考になりますね。

https://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/sangyo/kanko/documents/yamanogure-dexingu_matrix-20210405.pdf

 

さて、長々式の説明をしてきましたが、これの式が納得すれば、当初の疑問である「実際、荷物を軽くすると楽になるの?」「荷物だけじゃなくて自分の体重も軽量化させた方がいいよね?」といった内容の答えが見えてきましたね。

 

登山者の特性を決める2つの要素の軽量化によってエネルギー消費量を抑えられる、そう捉えられると思います。

 

だがしかし!

 

そう簡単な問題ではないのがこの難しいお話。

次回は本題に入っていきたいと思います。

今日はここまで!

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お気に入りの荷物を持って山に入るのはワクワクしますね♩



 

 

女性アスリートとして、大学院で学んだ山の運動生理学について、環境問題についても、トレイルランニングを通して得た情報を発信していますので、よかったら下の画像をクリックして応援してください♩

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