キミノの大冒険

次のレースはUTMB

ペーサーという文化、知っていますか。

 

ペーサーとは、レース中において選手を“伴走する”という仕組みのことです。 

でも、それはただの制度じゃありません。ペーサーはトレイル、特にウルトラトレイルの文化なんです。今回参加した奥信濃100ではルールとして ”27km地点からのみ” ペーサーが入ることが許されています。私たちはその規定に従って、チームを組みました。

 

一緒に走る、それだけじゃないんです



 

私は海外のウルトラトレイルレースで、

“ペーサー”という文化に出会いました。

 

ゴールは、自分の脚で越えるもの。

でも、その長い旅路を、ときに誰かがそっと隣で支えることがある。

真っ暗な静かな山の中、

「おい、まだ行けるぞ」と静かに声をかけてくれる存在。

その文化に、私は何度も救われました。

 

PはペーサーのP!

 

先週末に奥信濃100に挑戦した井上咲楽さんのペーサーとして、私は彼女と多くの時間を一緒に走りました。

 

でも、彼女の前を走り、ペースを引っ張ったわけじゃありません。

彼女は、彼女の脚で、心で、自分の山を越えていきました。

 

苦しみ、泣き、過呼吸になりながらも、

彼女は進み続けました。

 

私はただ、その姿を映し、記録しました。

 

 

時に大きなカメラを持ったりしながら

 

 

 

2年前に出会ったときから、

井上咲楽さんは“人に”ではなく、“自分に”負けたくない人でした。

 

だから私は、ウルトラトレイルが、彼女の強さや美しさを輝かせる場所になるはずだと思っていたのです。

 

 

 

トレードマークの満面の笑み

 

 

私自身も、かつて山の中で過呼吸になったことがあります。

真っ暗闇の中で、自分の存在が消えていくような恐怖に襲われました。

そのとき、ペーサーの言葉が私を救いました。

 

「キミノは強い。だからこの大会を選んだんだろ?」

 

あの瞬間、私は “ここにいる理由” を思い出せました。

 

 

 

うまく走れない、その辛さはわたしも十二分にわかる



 

そんな経験を伝えたあとも、彼女は言ってくれました。

 

「100kmを走ってみたい」と。

 

その一言は、私にとって宝物です。

 

 

足が疲れている時の大股はかなり足にくるんです

 

 

咲楽さんは、自分が走るだけでなく、ウルトラトレイルという文化を、もっと多くの人に知ってほしいと願ってくれました。

 

テレビでは映しきれない“長時間の山の物語”を、自分のYouTubeという場所から届けたいと話してくれたんです。

 

私は、その挑戦に心から感謝しています。

 

 

50km手前で疲れが顔に出始めた頃、ブナの森に癒されて笑顔に



 

「一人で走れないんですか?」

 

そんなDMが、彼女のもとに届いているそうです。

 

私から答えさせてください。

 

井上咲楽は、一人でも走れます。

その覚悟も、力も、持っています。

 

だけど、あえて言わせてください。

 

誰かと一緒に走ることを、弱さだと決めつけないでください。

支えることも、支えられることも、ウルトラトレイルが大切にしてきた文化の一部です。

 

 

そして私は、彼女にそれを体感して欲しかった。

 

人に頼ることは、甘えじゃない。

人と進むことは、強さなんだと。

 

 

" 頼れる " というのは強み

 

 

 

山はときに、牙を剥きます。

強がりや意地だけでは、命を落とすことさえある。

 

心が折れそうになるとき、

そっと隣にいてくれる存在が、希望になることがある。

 

「人といることで、自分を強く保てる」

 

それは、誰にとっても “ 武器” なのです。

 

 

 

エイドでの個人サポートもウルトラトレイルならでは

 

 

 

そして、“撮影が入って走る” というのは、

彼女がそのすべてを背負って走るということでした。

 

特に今回は、仕事ではなくプライベートの挑戦です。

 

ペーサー、サポーター、カメラマン。

多くの人がいるから楽になる、なんてことはありません。

むしろ、重くなることもある。

 

チームの時間も、体力も、お金も、準備も、

全部 “自分の挑戦のために動いている” ということ。

 

(もちろん、そんな風に思って欲しくないけど感じてしまうだろうなと思う)

 

人に頼ることが苦手で、

自分の全てを曝け出すことが嫌な彼女が、

それでもその重さを引き受け、

撮られながら走ることを自ら選んで走ったんです。

 

 

TEAM SAKURA
撮影スタッフではなく、チームである

 

 

それだけではありません。

 

 

彼女は “井上咲楽” という名前で走っています。

その知名度が生む期待とプレッシャー。

 

 

完走しても「1人で走っていない」と言われ、うまくいかなければ、「所詮テレビの人」と叩かれるかもしれない。

 

それでも彼女は、受け入れて、前を見て、走り続けました。

 

 

 

私には、それがどれほどの重さか、少しはわかります。だからこそ、彼女のゴールに、私は心から拍手を送りました。

 

そして、咲楽さんの走る姿を見た奥信濃の皆さんからも、それを感じて私は涙しました。

 

自分の脚で100kmの山を走り切った。
本当にすごいこと。

 

 

彼女はずっと剥き出しの闘争心で走っていました。

でも、それが崩れたとき、彼女は内にこもり、

ひとりで戦いはじめました。

 

 

その中で、奥信濃のエイドの皆さん、選手たち、

地元の方々、大自然――

あらゆるものが彼女に声援をくれました。

 

そして彼女は、か細い声で、

すれ違う選手たちにエールを送り始めたんです。

 

 

 

それが聞こえていたのは、もしかしたら私だけかもしれない。

でも私は知っている。

 

 

彼女があのとき、変わったことを。

 

 

 

大声援で送り出してくれたエイドの皆さんに私も涙しました

 

 

彼女は最後まで、自分と向き合って戦い抜きました。

 

 

本当なら、もっと崩れていたと思う。

それほどまでに彼女の心はズタボロだった。

 

 

でも彼女は、一歩の重さを知っていた。

進むことの価値を、知っていた。

 

最後の5km、彼女は輝いて走っていました。

 

 

 

 

 

 

だから私は思うんです。

 

井上咲楽は、強いウルトラトレイルランナーなんだと。

 

最高のゴールだね!

 

私は願っています。


彼女の姿を見て、挑戦しようとする人が現れたとき、
その隣に、そっと火を灯すように寄り添う誰かがいる文化が、
この先も続いていきますように。

 

 

私の大好きなウルトラトレイルに挑戦してくれて、ありがとう!

 

 

 

ペーサーという文化、知っていますか。

この文化に、私たちは何度も救われ、そして、前に進む力をもらってきました。

 

 

 

 

photo Ranyo Tanaka

 

note.com

www.youtube.com

 

 

Team SAKURA

井上咲楽https://www.instagram.com/bling2sakura/?hl=ja

田中嵐洋:https://www.instagram.com/ranyo_tanaka/?hl=ja

田島継二:https://www.instagram.com/heart_films/?hl=ja

宮﨑喜美乃

 

 

私自身、初めて参加した奥信濃100、コースはもちろんのこと、エイドの雰囲気や地元の方々の応援がなんだかアメリカのトレイルレースに近い感じがして、また参加したいな、と強く感じるレースでした。久しぶりの国内レース参加でしたが、たくさんの方と会えてとても感慨深い時間でした。貴重な経験をありがとうございました!

 

okushinano100.com