キミノの大冒険

Next Challenge UTMF 24-26 Apr. 2020

山には筋力はもちろんのこと筋パワーも必要

さて、2日連続夜更新になってしまったので、今日こそは!と張り切って起きたのにこの時間。泣 けど昨日は何を書くかも全く浮かばなかったけど、やっぱり、自分の研究を含め登山のデータをもっと世の中に広めたいので、今日はこちらを。

 

 

最初に書くと目次の通り、今日は長いです。笑

 

登山にもパワーが必要

運動生理学では『筋力』と『筋パワー』は違う意味を持ちます。筋力というのは、握力と同じで、静的な動作、つまり動作を伴わない力発揮、筋パワーは、動的な動作、スピードが掛け合わさった力発揮のことを意味します(例えば垂直跳びなど)。

 

筋パワー = 筋力 × スピード

 

山をゆっくり歩く時、通常は筋力がメインに使われます。しかし、例えば転びそうになった時はとっさに筋パワーが必要となります。また、段差の大きな下りでも同様に着地衝撃が大きくなり、それを受け止めるために筋パワーが必要とされる、と言われています。

  

https://www.instagram.com/p/5Ekqv3GoAE/

山ガール時代@miyazaki_kimino


登山中の事故を防ぐには筋パワーが必要なのでは

 

一般的に登山をしている方に多いトレーニングとしてスクワットがありますが、スクワットをする効果としては筋パワーではなく筋力強化をメインとしていることが多いと思います。登山者の脚筋力を測ると、年齢平均値よりも高い数値が出ることもよく言われていることですが、筋パワーについてはなかなか触れられていません。

   

もしかしたら登山中の事故に多い滑落・転倒事故の原因の一つなのでは、と予想したのです(社会人1年目の時に)。道迷いの次に多いのが、滑落・転倒による遭難です。(下図参照)これらを防げる策にもなるのではないか!!!

 

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平成30年における山岳遭難の概況(警察庁)参考に作図

参照ページ: 山岳遭難・水難|警察庁Webサイト



 

ということで、測ってみました。

 

 

225名の一般登山者・ハイカーさんによるデータ

 

協力してもらったのは、本格的な登山の訓練は積んでおらず、レクリエーションや趣味のレベルで登山やハイキングを行っている225名の男女(20~78歳)です。筋力は、脚筋力計を用いて、脚パワーは、階段駆け上がり一を用いて、年齢との関連を見てみました。

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階段パワーは一般家庭でもできる測定方法

研究内容の詳細:年齢・性別との関連から見た一般登山者の脚筋力と脚パワーの特性

 

そしてその結果がこちら👇

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登山の運動生理学とトレーニング学(p.400)を参照

 

横軸に年齢を、縦軸に各測定項目を。黒丸が男性、白丸が女性です。左の図は筋力との関連性、右の図は筋パワーとの関連性を見ています。

 

加齢と共に低下が進むのは脚の筋力よりも筋パワー

 

筋力、筋パワー共に加齢による低下が見られましたが、筋力はその関係性は低く、筋パワーについては加齢に伴う低下が顕著にみられました。

 

両者の相関係数は以下の通り。

年齢と脚の筋力との関係

男性 r = -0.307(p<0.001)女性 r=-0.239(p<0.05)

年齢と脚の筋パワーとの関係

男性 r = -0.721(p<0.001)女性 r=-0.656(p<0.05)

 

脚の筋力に伴う筋パワーが備わっていない?!

 

さらにこのデータの後にさらに詳しく分析した結果、脚筋力に優れている人でも、脚パワーは劣る可能性があることが分かりました。つまり、同年代の方に比べると脚力は優れているものの、脚パワーは低い可能性が高い、というアンバランスさが確認されたのです。

 

ゆっくり歩くことが中心となる登山の場合は特に素早さ、スピードというのは不要視されやすいですが、とっさの場合の危険回避という点ではこの能力を鍛える必要がある、と言えると思います。

 

https://www.instagram.com/p/BmK80_aFqIc/

重い荷物を背負って歩くトレーニングだけじゃなくてね。笑 @miyazaki_kimino

 

 

年齢との関連性は強いものの個人差が大きいのも事実

 

このデータは個人差がとても大きい、というのが特徴の一つでもありました。筋力のデータが顕著にそれを示していますが、平均的な数値で見ると加齢に伴う低下が明確となりましたが、同じ年齢を見てみると、縦長に大きくバラついているのが分かります(筋力の図)。

 

そこで測定させてもらった方の普段の登山頻度別に、脚筋力の分布を見てみました(下の図)。この時測定した全員の脚筋力の平均値(体重当たり0.61kg/kg)を基準に、基準値以下(青)とそれ以上(緑)の分布に分けてみました。すると・・・

 

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日頃の登山頻度別の脚筋力値の分布

 

 

1か月に3回以上になると、平均値を上回る方が6割以上となり、1ヵ月4回以上になると8割近くにもなることが分かりました。登山をすると脚筋力が鍛えられる、と言われますが、その境界は「1ヵ月に3回以上」という説がこれで生まれました。

 

データの限界

https://www.instagram.com/p/87snybmoLR/

山ガール時代2@miyazaki_kimino

 

当初は登山中の事故に筋パワーが関連するのでは、という予測の元に実験を進めました。しかし、筋パワーのデータが少なかった、ということもあり、今回の論文では、一般登山者・ハイカーさんの脚筋力・脚パワーがどのくらいなの?とまでしか言及できませんでした。

 

予想していた、筋パワーが高いと転倒・滑落事故が少ない、という関連性や、筋パワーを鍛えることで、登山中のトラブルが減った、というトレーニング効果まで出るといいかなとは思います。

 

そこは今後の課題。

 

 

 

トレイルランニングにも同じことが言える?

 

トレイルランニングで考えると、歩くよりも走ることで筋パワーが鍛えられるため同様の結果にはならないと思います。ただし、ゆっくり長く山を走るだけでは結果がパフォーマンスは上がらないのも事実。

 

それについては、日光のレース分析で言及しています👇

k1m1n0.hatenablog.jp

 

 

いずれにしても山に行く回数を増やすことで筋力はアップすることは間違いありません。より下りを早く走るには、筋パワーを鍛えてもいいかも。そのくらいにしか今回のデータでは話せませんが、ひとつの指標にしてみるのもいいかもしれません。

 

 

さいごに

ちなみにザックリ書いたこの論文紹介は、実は学会賞を唯一受賞できた研究でもある思い出深い作品です。ぷっくり体形が可愛い(ということにして。笑)20代の成果でした。

https://www.instagram.com/p/BGQVoaUmoNK/

第36回日本登山医学会@栃木・念願の奨励賞受賞!受賞記念講演もさせていただきました!研究はじめて7年目。目標のひとつが達成できました。

 

 

長い文章読んでくださり、ありがとうございました。ブログの質がまちまちですが。笑 変わらずよろしくお願いします!

 

 

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